ただの相談役 気まぐれブログ
木守柿
202202.17
大切で大事な家の診療所
倉敷茶屋町ユーリン・ホーム。
「お父さん知っとった?
柿の木に一個だけ
実が残っとるんよ」
新聞を読んでいる私に
秘密を打ち明けるように
奥さんがささやきかけてきた。
『木守』のことを
言っているんだと
すぐに分った。
『きもり』『きまもり』『こもり』
人が取りつくさず
柿の木への感謝と
生き物たちのために
残す柿の実のことを
『木守柿』という。
隣家の柿の木が
小鳥たちがついばんだ後
きれいな形で一個だけ
実を残していた。
『奇跡だ』
朝 目を覚ませて
すぐに開けた
カーテンの向こうで
赤い実が輝いて見えた。
『奇瑞だ』
何かを期待して
階下に降りてきたばかりだった。
「ええこと‥‥ありそうやな」
「あるじゃろ‥‥きっと」
昨日は別段何もなかった。
執筆者:中井勝人