ただの相談役 気まぐれブログ
オンリーワンの家づくり
倉敷茶屋町ユーリン・ホーム。
。
『中学生までに
読んでおきたい哲学』の
巻1『愛のうらおもて』は
19人の著者の
短編や随筆で
半日で読了した。
太宰治の文章が
一番馴染みがあり
スケッチ風の小説も
読みやすかった。
『満願』は主人公が
親しくなった
医者の家での見聞を
描いたものだ。
。
お医者の家では、
(略)その時刻に、
薬を取りに来る
若い女のひとがあった。
簡単服に下駄をはき、
清潔な感じのひとで、
よくお医者と診察室で
笑いあっていて、
ときたまお医者が、
玄関までそのひとを見送り、
「奥さま、もう少しの
ご辛抱ですよ」と
大声で叱咤することがある。
お医者の奥さんが、
あるとき私に、
そのわけを語って聞かせた。
小学校の先生の奥さまで、
先生は、三年前に肺をわるくし、
このごろずんずんよくなった。
(略)
八月のおわり、
私は美しいものを見た。
朝、お医者の家の縁側で
新聞を読んでいると、
私の傍に横坐りに
座っていた奥さんが、
「ああ、うれしそうね。」
と小声でそっと囁いた。
ふと顔をあげると、
すぐ眼の前の小道を、
簡単服を着た清潔な姿が、
さっさっと飛ぶようにして
歩いていった。
白いパラソルを
くるくるっとまわした。
やはり私は
太宰の文章が好きだ。
女性を心を描かせれば
ピカ一のうまさだと思う。
しかし 私なら
中学3年生にならないと
この『満願』を読んでも
『簡単服の奥さま』の
辛抱強さや苦しさ
切なさや恥ずかしさ
白いパラソルを
くるくるっとまわす喜びは
分からなかっただろう。
中学生までに読んでおいても
分かるかなぁ~。