スタッフブログ

「パパさんの車」
201007.05

おはようございます。

今朝、実家でコーヒーを飲んでいると、母が
「おばあちゃんが、紙もってあんたを探してたよ」というので、

介護保険のことだろうと思い祖母の部屋に行くと、

「これな、ブログに載せてもらおうと思って」と

原稿用紙を渡されました。

私の叔父さん、つまりガマさんの弟さんの
小学校4年生のときの作文。

「読みたいねんて」と祖母。

別にいいけど、
叔父さん以外の人が読んでもいいのかなぁと思いつつ、

載せます。

80過ぎの祖母は
「ブログ」なんて言葉を使いはするけれど、
いろんな人が見る可能性があることは分かってないんだなぁ~。

それでも、姪っ子の私が偉そうですが、
ほのぼのとした、いい作文だと思います。

「パパさんの車」

僕が学校から帰ると、横の庭でパパさんが、また自動車の下えもぐりこんで、足だけが、にょっきり出ていた。

 「パパさん、また故障か?」

 「うん、またこのポンコツ、腹いた起しよったんや」

平気で、とくいそうにハンドルを廻している。

 首をまげて、自動車の下からニヤーと笑って顔を出した。鼻の頭に油が黒く光っている。

 「良いのん買わなあかんナー」

 「ふーん、お金でも拾わなあかんなァー」

 「パパさん、頼りにしてまっせ」

 三十分ほどして僕が宿題をしていると、顔や手を油だらけにして、パパさんが

 「義坊!し運転や、ドライブしようか」

 と言ったので、
 
「大じょうぶかいなァ」、と言ひながら車にのった。

 「まかしとき」 と、キーを入れた。

 ブルンブルンブルン…ガタン、ガタン、ガタンと、車は体をふるわせながらエンヂンがかかった。

 「どうや!パパの腕もちょっとしたもんやろ」

 得意そうに、油のついた鼻をうごかして、パパさんはハンドルをしっかりにぎった。

 「出発!」

 スベルようにとはいかない。ガタン、ガタン、ガタ、車は走りだした。

 キイ、キイ、キイ、小さな悲めいをあげながら、それでも、いっしよう懸命、町の中を走ってゆく。

 横をスイスイと、ピカピカの良い車が追いこしてゆく。

 バイクが、馬鹿にしたように前えととび出して抜いてゆく。

 「パパさん、もっとスピード出しいなー」

 「あかんあかん、また腹いたおこしよったらかなんがな、安全運転や」

 ガタガタガタ、キイキイ、ブルンブルン。

 「パパさん、この車ばんそう入りやな」

 「ほんまや、カーラジオ付きの外車や、フフゥン」

 パパさんは、ドンドン皆んなのに抜かれても平気で、とくいそうにハンドルを廻している。

 「そやけど歩いているよりは早いなァ」

 「あほくさ」

けれど僕は、どんな自動車にのっているよりもパパさんの車にのっているのが一番安心や。
 
 ガタガタガタ、キイキイキイ、ブルンブルンブルン、ものすごい車の波の中をパパさんの車はよたよたと走ってゆく。

(原文のまま。)

以上、今から約45年前の小学校4年生が書いた作文でした。

執筆者:片岡千尋
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