お知らせ
カメ仙人はコイ仙人でした。
200906.14
こんにちは、ガマ仙人です。
「あんたが買ってきたんやろ。たまには連れていってやられ」
奥さんの怒声に追い立てられるようにアズキと散歩に行った。
汐入川の西の堤をのんびりと歩いていると、
堤の下の用水路をながめている人がいる。
ときおり、何やら投げ込んでいる。
食パンだった。
もしや、息子の話していたカメ仙人。
水面に漂うパンクズを目で追う。
ミドリガメが4~5匹泳いでいる。
そのカメを引き込むように渦ができ、
巨大な魚が顔を出し、パンクズをごくりと飲み込んだ。
「すごいもんですなぁ、コイですか」
私は思わず話しかけていた。
「あぁ、120センチはあるやろ。あと2匹おる」
「慣れてるものですなあ」
「手からも食べよる」
「どれくらいかかりました」
「3ヶ月かかったなぁ。このためにパンを買いだめして、冷蔵庫に入れとる」
「ふ~ん」
世の中、変わったことに情熱をかたむけている人がいるものだ。
だから楽しい。
10分ばかりカメ仙人ならぬコイ仙人の所作にみとれ、
「また来まあ~す」と私。
これではまるで小学生の帰り際の挨拶じゃないか。
執筆者:片岡千尋